2016年08月

競技スポーツが求めるものとは

リオ・オリンピックを終えて

最近のオリンピックは殆ど現地に行っていたため、他の競技をしっかり見ることはなかった。しかし今回のリオ・オリンピックは日本でテレビ観戦が出来た。柔道、レスリング、体操、水泳、バドミントン、卓球などの日本選手の熱の入った戦で、多くのメダルを獲得した。
 トップクラスの戦いになると殆ど力の差のない中でのこの成績に、選手達の精神面の強さを感じた。それと同時に勝っていく流れが出来たことも大きいように思われる。柔道の井上監督も言っていたが前のロンドン大会の失敗があって奮起したように、問題点を見つけそれを4年間にわたり修正してきたことが大きな要因であろう。
 さて、メダルはどうなるのかと気にしていた陸上競技であったが、最後に50㎞競歩で荒井選手が見事銅メダルを獲得し日本の陸上競技も救われた感がした。だがその夜はさらにそれを上回る成果が男子400mリレーで実現した。山縣選手、飯塚選手、桐生選手、ケンブリッジ選手がアンダーハンドパスを見事つないでジャマイカチームに次いで2着となり銀メダルを獲得したのである。

それも9秒台の選手を4人揃えたアメリカ(アメリカはその後失格となる)に勝ったこと、そして何よりも超人ボルトの次にゴールしたことが多くの人にインパクトを与えた。
 陸上競技も、いよいよ4年後の東京大会に向け正念場がくる。
 

●競技スポーツが求めるものは何か

リオ・オリンピックを見てきたところで、人に感動や希望、勇気を与える「競技スポーツ」とは何かを考えていきたい。

スポーツや運動には、楽しむことや健康増進、リハビリなどを目的とし行われるものなど、その幅は実に広いといえる。それでは、競技スポーツは、一体何のために、そしてどんな事を目的として行われるのだろうか?その一つは、柔道やレスリングなど、相手に勝つことや、またサッカーやバスケットボールのように、相手チームに勝つことが目的となる。また、陸上競技や競泳のように勝つことも目的とするが、もう一つの目的がある。それは、自己の記録を上げていくところにある。

勝つことや自己記録を更新することは、即ち、個々の競技力を上げていかなくてはならないのである。その競技力とは、精神面や体力、技術、コンディショニングなど、いわば総合的なものである。これらがレベルアップすることにより、勝負に勝つことや自己記録更新に繋がっていく。
 勝負に勝ったり、記録が上がったりした時を、「高まる」、あるいは、「向上する」ということになる。その時選手は、努力をして得た成果への喜びや幸せを感じ、そして自信を得ることが出来るのである。それは、選手だけではなく、指導者や選手を支えてくれた人達、更にオリンピックのように応援してくれる国民もその喜びや幸せを共有することになる。
 
 これは決して競技スポーツだけでなく、あらゆる分野においてもいえると思う。また、その人自身が高まりたい、向上したいといった強い意欲が活力となるのである。また次のブログでは、活力を生み出す原動力や、個々に合った「適正」について書いてみたいと思う。
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今日は、娘の由佳が日本幼児体育学会のシンポジウムで発表を行った。私もゲスト参加者として会場に伺い、参加者の皆さんとの交流があった。
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「幼児期の運動体験と大人の関わり方」をテーマとしていたが、発育発達期の運動はとても重要である。こちらも、また折に触れ、解説をしたいと思う。

リオ・オリンピック女子ハンマー投優勝者ヴォーダルチク(ポーランド)

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オリンピックにおけるハンマー投の歴史

 2000年シドニー・オリンピックより女子ハンマー投が始まって今回が5大会目となる。

初代オリンピックハンマー投優勝者はポーランドの故・カミーラ・スコリモフスカである。その年の世界ランキング1位記録は7568だったが、オリンピックでは17歳のスコリモフスカが7116で初代優勝を勝ち取った。当時から女子ハンマー投選手の体は大きかったが、その動き(技術)は男子選手と比べると未成熟であった。

 当時、世界の女子ハンマー投は歴史の長い男子と比べると記録の進展が顕しかった。そうしたところから、私の娘、由佳もオリンピック出場に可能性を持ったのであろう。由佳は、1998年、大学4年生のシーズンオフから円盤投と並行しハンマー投を始め、なんとその5年後の2004年に6777を投げアテネオリンピックの代表となった。その後は当然のように世界の女子ハンマー投は記録を伸ばし続ける。

魅力を感じる投擲テクニック

 記録が伸びていく一方で、私にとっては、技術的に魅力を感じない選手が多かった。様々な投擲のタイプがあるが、たとえば、正確なフットワークもしないまま強引に回転スピードを上げて投げ出す選手、スムーズに大きく回転に入っていくことのできないような変則的スウィングをしている選手、また回転中の重心が高く最大限のハンマーの加速ができないような体勢で回転し投げる選手などである。

そのようなことから、ある選手が余計に目立っていたのであろう。それは2008年北京オリンピック女子ハンマー投予選を、観戦に来ていた由佳とスタンドから見ていた。そこに男子ハンマー投世界記録保持者のユーリー・セディフ氏、世界歴代2位のセルゲイ・リトビノフ氏や息子広治らの動きに匹敵する魅力ある選手を見つけたのである。その選手がアニータ・ヴォーダルチク選手であった。

ただしその時点ではまだ改良すべきところはあったが、その投擲に彼女の将来豊かなものを感じたのである。その後ずっと注目している中、昨年8085の世界新記録を北京世界選手権で投げた。そして、迎えたリオ・オリンピックである。

彼女にはまだ二つの改良しなければならない点があったのだが、その一つの"振り切り"が良くなっている。まだ完璧とは言えないが、身体左方向に向けハンマーを大きく移動させながら振り切っている投擲を見て、これは"振り切り"が改良されたと思った。案の定、8229の世界新記録を投擲した。
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世界記録が更新された最大のポイント

 さて、ここからはハンマー投の選手や指導者に向け、ヴォーダルチク選手の投擲動作の良いところを、分かりやすく説明したい。少し専門的な内容となるが、勿論興味ある方は引き続き読んでいただきたい。まずいつも念頭に置いておかなければならないことは、ハンマー頭部の投げ出す瞬間のスピード(投射スピードとも初速度)で飛距離が決まるということであり、これは絶対的なものである。もちろん投射角度や投射高さらに飛んで行ったハンマーには空気抵抗もかかるが、それは飛距離にほとんど影響しない。

 およそ投射時に秒速30mのスピードをハンマー頭部に与えると82m~85m飛んでいく。秒速30mは時速にすると120㎞弱になる。仮に秒速29mにハンマー頭部のスピードを落とすと75mくらいになってしまう。いかにハンマー頭部の投射時のスピードが大事であるかを理解していただき、彼女の投てき動作を下記にまとめて説明したいと思う。

●スウィングから各回転そして振り切りまで、でんでん太鼓のごとく体幹部から横振りにハンマー頭部を大きく振って加速している

●回転に入り振り切りまで腕がひものような状態となってハンマー頭部と一体化して加速しているので、投射時には自然に大きな回転半径となりハンマー頭部の加速をさらに高める

●各回転から振り切る直前まで身体重心が低いため、回転スピードかなり高まった状態でも安定感がある
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可能性を秘めた有力選手

 さて今回のオリンピックでは、まだこれから伸びて行くであろうと思われる動きの良い選手がいた。それはイギリスのソフィー・ヒッチョン選手で、7454を投げ、銅メダルを獲得した。IMG_4626
彼女のコーチはトーレ・グスタフソン氏で広治のトレーナー兼コーチであったことから私との付き合いも長かった。

 ロンドン・オリンピックではヒッチョン選手も交え広治、グスタフソン氏と私で食事もしたこともある。広治や私の投擲技術の考え方がグスタフソン氏にも理解され、それがヒッチョン選手の指導に繋がっていることが分かるので嬉しくなる。この動きを掴んだヒッチョン選手はこれから大きく伸びて行くことであろう。
 勿論これらは、ぜひ日本選手にも理解して実践していってもらいたい。
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投擲選手のコーチング

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今日は、少し投擲競技についての専門的な内容です。

先日、久しぶりに中京大学(愛知県豊田市)に行き

投擲選手のコーチングを行いました。

私が長年教鞭を執りながら、アスリートのコーチングをしていた場所です。

昨年春まで指導してきた円盤投選手に少しアドバイスをしました。

ハンマー投選手には、現在持っている個々の技術的な問題点を

少し時間をかけ修正しました。


皆学ぼうという意欲に満ち溢れ、好感をもちました。

しかし、今まで指導してきた選手は一言二言のアドバイスで理解し
ある程度動きを正していくことが出来ますが、私の指導の少ない選手や
初めての選手は、私の投擲技術の考え方を理解させることから始めるので時間がかかります。

実際の投擲技術に反映してくるまでは少なくとも1年や2年はかかるのです。

 

ハンマー投の植松選手は日本選手権では2位となり、
70mに届くところまで記録が伸びてきている選手です。

しかし投擲技術には大きな問題点があります。
特に3回転目から身体が立ちすぎてしまい、
ハンマーの軌道が縦振りとなってしまいます。
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この写真の1回転目のように大きな回転半径とはなりません。

これが可能にするためのアドバイスをしました。

また4回転であっても投射時にはサークルを30センチ程度余すくらい

各回転キッチリ回ることのできるフットワークが要求されます。

さらに言うならば、回転の入りで遠心力のかかったハンマー頭部と背中の腰椎のあたりが
ピンと張って釣り合った状態を作ることです。

このような動きができるようになれば70mをコンスタントに投げる選手になると思います。

さらに磨きをかけていけば、将来オリンピックの参加標準記録を

超える選手になるかもしれません。

自分に可能性があると、期待を持ち頑張ってほしいものです。
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室伏重信profile
◆生年月日 1945年10月2日

◆出身地  静岡県沼津市

1989年 中京大学体育学部教授

2011年 中京大学体育学部名誉教授



◆主な競技実績

陸上競技 男子ハンマー投 オリンピック代表、アジア大会5連覇

日本選手権10連覇

自己ベスト記録 75m96㎝ (日本歴代2位)



1966年 第5回アジア競技大会(バンコク) 2位

1970年 第6回アジア競技大会(バンコク) 優勝

1972年 ミュンヘンオリンピック 8位

1974年 第7回アジア競技大会(テヘラン) 優勝

1976年 モントリオールオリンピック 11位

1978年 第8回アジア競技大会(バンコク) 優勝

1980年 モスクワオリンピック

*日本代表 日本のボイコットにより出場ならず

1982年 第9回アジア競技大会(ニューデリー) 優勝

1984年 ロサンゼルスオリンピック 14位

1986年 第10回アジア競技大会(ソウル) 優勝

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