オリンピック選手になるための条件Ⅲ

素質の見極めが、自己の最も伸びて行く競技スポーツを見つける手助けとなり、将来オリンピックに繋がる道ともなる。その素質、「体力」「体型」「感覚」の「体力」は前回終わった。今回は「体型」について考えてみたい。

 

陸上競技選手の体型は、それぞれの種目によって異なる

 

陸上競技の種目数は、男子24種目、女子23種目と多い。走る種目には短距離、中距離、長距離そしてマラソンがある。また競歩や跳躍、投擲などがあり、それぞれの種目で要求される体型は異なる。

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 写真1:長距離選手と投擲選手では、競技の求められる体型に大きな違いがある。

 

特に、細くて体重の少ない長距離選手やマラソン選手と、筋肉量が多く体重の多い投擲選手とでは、その体型は全く異なる。

また、同じ走種目でも殿筋や背筋の発達した短距離選手と、身体全体が細い長距離選手とでもその体型も異なりを見せる。

跳躍種目の中でも微妙に異なるが、それは投擲種目についても同じことが言える。

中・長距離やマラソンは、同じような体型であることから、種目の変更が楽に行われる。

 

世界トップレベルの短距離選手の体型

 

これは私の持論であるが、走競技は両脚を使い身体重心を運ぶものである。その時、身体の前面に重心があると、一歩前に振り出した膝に重心が乗りやすくなって結果、地面反力を高め推進力を上げることが出来る。この身体重心が身体の前面にあるのは、オリンピックなどに出場している短距離選手を見ると分かる。それは殿筋や背筋の発達した体型にある。

 

これは細い体型の、中・長距離選手やマラソン選手なども、良い走りをしている選手は、身体重心が身体の前面にある。また短距離であれば中間疾走時にあたるが、走技術の工夫により、身体重心を身体の前面に持ってくることは可能である。このような体型と走技術の工夫により身体重心は身体の前面にきて、前方へ自動的に動き出すような走りとなる。当然、走競技は個人差もあるが、身体重心の上下の位置も地面反力に大きく影響してくる。

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 写真2:短距離選手の体型。背筋や殿筋の発達が見られ、身体重心は身体の前面にある

 

また「てこ運動」を考えた場合、骨に付着している腱の位置が、力の発揮に優位に働くとされているので、そこも関係してくるかも知れない。

しかし、この殿筋や背筋の発達した体型が、水泳競技になると不向きになると思われる。このような体型は、水の抵抗が多くなるのかも知れない。水泳選手に、陸上競技の短距離選手のような殿筋や背筋の発達した選手がいないことからも分かる。

 

体型は競技力に大きく影響する

 

日本のトップを目指すのであれば、それぞれの競技種目で活躍している選手たちの体型を調べ、世界を目指すのであれば、世界でトップレベルの競技種目の選手達の体型を調べるとよい。

 

ただし、成長期の子供たちが、専門種目を選ぶ上においては難しい。それは、将来の身長、体重がその時点で分からないからである。

 

しかし、体型が競技力に影響する以上、よく考え専門とする種目を選ばなくてはならない。

 

オリンピック選手村の食堂で見た多くの競技種目のアスリートたち

 

オリンピック選手村のダイニング(食堂)は各国の選手で賑わう。私が出場したオリンピックでも、ダイニングを利用していた。色々な選手がいたが、一際目立つと感じたのが、バスケットボール選手だった。男子選手は2mを超える者が多く、中には220㎝以上の選手もいる。それは、長身選手の方がバスケットボールに有利に働くからである。
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 写真3:写真は、娘の由佳が2010年広州アジア大会に出場した際の
 選手村ダイニングの様子。オリンピックでも同様の雰囲気である。
 各国、各競技の選手が競技会に合わせて食事を取るため24時間オープンしていることが多い。


また体操は、逆に大きな選手はいない。高い難度の技を表現できる、少し小さな体つきの選手が多い。女性は150㎝を切ってくる選手もいる。

皆それぞれの競技種目に適した体型の選手達の集まる場なのである。

 

北京オリンピックでの中国の金メダルは51個

 

さて2008年の北京オリンピックで、中国は51個と断トツの金メダルを獲った。しかし、陸上競技や水泳は金メダルが取れなかった。その内訳は、金メダル4個以上だけの競技をピックアップすると、重量挙げ8個、飛込み7個、体操7個、ライフル射撃5個、卓球4個である。多くの金メダル獲得した競技は勿論であるが、その他金メダル取った競技種目も含め考えると、それぞれの競技種目に向いた体型であったと言える。

 

次回は私が最も重視している感覚について考えを述べる。

オリンピック選手になるための条件Ⅱ

自己の素質から、伸びる可能性のある競技スポーツを見つけることの重要性は、前回のブログに記した。今回は、三つある素質「体力」、「体型」、「感覚」の中の「体力」にスポットを当てる。

 

瞬発力系スポーツ向きか、持久力系スポーツ向きか

瞬発力と持久力との区分は難しいが、ここでは無酸素運動を瞬発力系とし、有酸素運動を持久系とする。

これをオリンピック種目の中で考えてみる。

瞬発力系スポーツの代表的なものに、大きなパワーを必要とする投てきや重量挙げ、また、それ程大きなパワーを必要としないゴルフや飛込競技などがある。その他の瞬発力系スポーツとして、陸上競技の短距離、跳躍や体操などもある。


持久系スポーツにおいては、陸上競技の中距離・長距離、競泳、自転車、トライアスロン、カヌーなどがあげられるが、ボートなど大きな筋力も必要とする。

球技などは、ボールに対しいかに早く反応してボールに追い着くか、ということを考えると瞬発力系素が多いが、長時間のプレーに対する持久力も必要となる。

柔道やレスリングも、技をかける時の素早い動きは瞬発力系であるが、競技時間内戦う持久力も必要である。

また馬術、射撃、アーチエリーなどは神経系主体のスポーツと言える。

あなたの体力から、向いたスポーツ種目を見つける


瞬発力系能力の持ち主か持久力系能力の持ち主なのかは、小学校や中学校の体育の授業の中で行われた運動能力テストの50mダッシュや幅跳び、そして持久走などで分かる。50mダッシュや幅跳びの能力が高ければ瞬発力系のスポーツに向いており、長い距離を走ってもあまり苦しさを感じない者は、持久系スポーツに向いていることになる。


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(写真1)スタートダッシュ(森長正樹氏協力)


また、個々が持つ速筋線維、遅筋線維などの割合によるものであるが、瞬発力系を得意とする者は持久的能力に劣り、持久力系を得意とする者は瞬発力系能力に劣るので、どちらに向いているかが分かりやすい。


先天的にスピードやジャンプ力の高いレベルの持ち主は、すべての瞬発力系スポーツでの活躍が期待される。

 

瞬発力系か持久系かは、運動能力テストにより中学生位までにおよそ分かる。しかしこれは、あまりトレーニングがされてない状態での測定が望ましい。

さてこの時期の測定で見逃してはならないのが、スピード(30m50mダッシュ)やジャンプ力(走り幅跳びや立幅跳び)である。これら能力は先天的なものであると思われる。特に男子で立幅跳びを3m、女子で2m50を超えてくる者、50mダッシュ、男子で6秒前後、女子で7秒を切ってくる者などは、多くの瞬発力系競技に向いている。
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(写真2)立ち幅跳び(森長正樹氏協力)

私の立ち幅跳びのベストは3m50近くがベスト記録だった。参考までに、息子の広治は3m50を超え、由佳は2m80近くまで跳んだ。50mダッシュの私のベストはスパイクを履かず58、広治は58を切り、由佳は67台で走った。これらのベスト記録は、中学生の後半ではなくとも、その時期と大きく変わらなければよい。このレベルが高ければ高いほどオリンピックも可能性が出てくる。

またこれは、仮に成長とともに体重の増加があり、スピードやジャンプ力能力が低下したとしても、後のトレーニングにより筋力などの高まりがあれば競技力に影響しない。
専門種目を決めた後からのトレーニングについて

専門種目を決め、身体の成長期を過ぎた後に各種トレーニングを長期間続けていくと、筋力や持久録は大きな伸びを見せる。そして競技力をさらに高めることができる。このため、成長期の過度なトレーニングは成長の阻阻害にも繋がるので、避けるべきであろう。特にウエイトトレーニングは大学生になってから本格的に行えばよいと思われる。

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   (写真3)大学3年次の写真、本格的ウエイトトレーニングは大学生から
              しかしハンマー投げはこのころから2年半ものスランップが始まる

今回は個々の体力から、どのような競技スポーツに向いているかを考えてみた。
次回は体型について述べていく。

オリンピック選手になるための条件

オリンピックに出場し活躍できる選手になりたいと、誰もがこの夢を持って競技スポーツを始める。
このオリンピックに出場する選手達は、一体どのような能力の持ち、その能力はどのようにして作られたのであろうか。
これは私が考えるオリンピック選手となる条件であり、小さい子供さんやお孫さんをお持ちの方、あるいは現在オリンピックを目指している選手には、ぜひ読んでいただきたい。
また、これらは陸上競技に限らず全ての競技スポーツに通じるものである。

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 1972年ミュンヘン・オリンピックの壮行会、当時26歳で初のオリンピック代表


選手個々が、より高まる競技スポーツを見つける
まずは、個々が最も伸びていく競技スポーツを、見つけることである。いくら自分が好きだからといっても、そのスポーツが将来大きく伸びるとは限らない。

以前、競技スポーツが求めるものとはでも書いたように、競技スポーツの目的は、「勝つ」こと「記録を伸ばす」ことにある。その目的を達成した時は、喜びや幸せ、そして自信も獲得し、活力も生まれてくる。しかし、負けることや記録も伸びない状態が続けば、苦痛を感じ、その結果自信も失うことにもなる。このためにも、種目の選択を間違えてはいけない。
専門とするスポーツを始めるのは、中学生や高校生からであると思われる。この時期に将来、最も伸びていくスポーツを見つけるのである。それにより個々の持っている夢を実現する可能性も出てくる。
それでは、どうのようにしてこのスポーツ種目を見つけるかである。それは個々の素質をよく見極めることである。

 
自己の素質を見極めること
この素質(資質)には、「体力」、「体型」、「感覚」の三つの大きなものがある。「体力」は瞬発力のある体力なのか、または持久力のある体力なのか、「体型」はそれぞれの競技スポーツに向いた体型をしているか、「感覚」はあらゆる方向にタイミングよく安定して動いていけるものを持っているか、などである。
これらを総合的に考え、個々が最も伸びていく競技スポーツを見つけていく。DSCN7114
 
幼少期の運動は競技の専門性に偏ることなく
 遊び運動など中心として運動感覚養いながら
 身のこなしを学習していくことが好ましい
今後は、「体力」「体型」「感覚」を詳しく説明していきたい。次回は「体力」を取り上げる。

室伏重信profile
◆生年月日 1945年10月2日

◆出身地  静岡県沼津市

1989年 中京大学体育学部教授

2011年 中京大学体育学部名誉教授



◆主な競技実績

陸上競技 男子ハンマー投 オリンピック代表、アジア大会5連覇

日本選手権10連覇

自己ベスト記録 75m96㎝ (日本歴代2位)



1966年 第5回アジア競技大会(バンコク) 2位

1970年 第6回アジア競技大会(バンコク) 優勝

1972年 ミュンヘンオリンピック 8位

1974年 第7回アジア競技大会(テヘラン) 優勝

1976年 モントリオールオリンピック 11位

1978年 第8回アジア競技大会(バンコク) 優勝

1980年 モスクワオリンピック

*日本代表 日本のボイコットにより出場ならず

1982年 第9回アジア競技大会(ニューデリー) 優勝

1984年 ロサンゼルスオリンピック 14位

1986年 第10回アジア競技大会(ソウル) 優勝

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