強化へのアプローチⅢ

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前回は「ニュートンの法則」を基に考えた「力の伝導」の説明をさせていただいた。今回はもう一つの「力を発揮する順序」についての考えを述べる。

 

「力を発揮する順序」

強い筋群の集まる体幹部(骨盤まわりや胴体)、そして大腿を先に働かせて、その力を手(腕や肩も含む)や足(下腿も含む)に伝える。

手や足は速く働くが、体幹部より筋肉量が少ないため大きな力は出せない。このため大筋群の集まる体幹部から先に働かせ、末端の手や足に伝えることで大きな力が発揮できる。

仮に手や足を先に働かせてしまうと、体幹部がよく使われないまま動作が終わってしまうので大きな力は出せないことになる。

競技会や練習において投てき(砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げ、やり投げ)選手の手投げをよく見かける。その手は肩や腕も含まれるのだが、手(肩・腕)が先に働いてしまうことにより、体幹部の働きが十分できず、結果、大きな力が出せないまま投げてしまうことになる。

 

歩く、走る、跳ぶといった動作も同じで、体幹部から先に働かさなければ大きな力は発揮できない。一般の方だけではなく競技者も含め、体幹部を使わず足だけで歩き走っていている人は意外と多い。

 

特に、日常生活の中では、手足ですべて事足りると考えてもよい。そのため、体幹部から先に働かすことがほとんど無く、体幹部から先に働かす訓練を普段から行っておく必要がある。

 

ここで、胴や臀部そして大腿の体幹部を先に働かすと言ってきたが、私はこれら体幹部を丹田により操作することをすすめる。このため体幹部は丹田に操作されやすいような姿勢にしておかなければならない。これは歩、走、跳、投だけにはとどまらず全てのスポーツに当てはまる。しかしこれには訓練が必要であるが、覚えてしまえば体幹部を自在に働かすことができるようになる。

 

「力の伝導」と「力を発揮する順序」をまとめ、実例を挙げ説明する。

私が25歳の頃、ハンマー投げ技術のレベルアップを目的に(移動、ひねりの戻し、重心の位置、倒れ込み、ブロック)などの組み合わせと、(体幹部から先に力を発揮する)を考え実験を始めた。そしてこれら実験を通して何をすべきかの課題が見え、練習は面白くなった。結果、長い年月かかったが満足いく記録を残せた。

 

さらにハンマー投げについて話を続けると、ニュートンの第2法則(運動の法則)が最も重要となる。これに関して詳しく説明すると、飛距離は投射時の(投射スピード)(投射角)(投射高)によって決まる。この条件から考えると最適投射角で投げ出されても、また人の身長を考慮に入れた投射高も飛距離に大きな影響を及ぼすことはない。飛距離の決め手は投射スピードである。このため、投げ出す瞬間のハンマー頭部のスピードを最大限上げることを目的とし、各回転時にハンマー頭部の加速を行っていく。

 

当然、加速(ニュートンの第2法則・運動)はハンマー頭部への力の作用が必要で、その力は大きければ高度な加速につながる。この大きな力を求めていくためスウィングから各回転そして振り切りまで最もハンマー頭部に力の伝わりやすい姿勢をつくり、体幹部から力を発揮することを考えるのである。さらにその大きな力を長い時間ハンマー頭部に作用させる力積、もしくは長い距離ハンマー頭部に作用させる仕事を考え行う。

 

上記はニュートンの法則を基にハンマー投げを考え実践してきたものである。

歩、走、跳、投また多種の動作もニュートンの法則を基に考えていくことにより、向上のための何らかのヒントを得ると思われるので是非チャレンジしてほしい。

 

次回は、もう一つの法則である「生物の一般的特徴」について説明していく。

強化へのアプローチⅡ

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‘労多くして功少なし’のように、一生懸命やっているのに成果が出ない。実際このような選手は多い。 

解決の方法は、法則を基に考えていくことであろう。そうであれば強化の方向を見失わないで済む。

前回は「ニュートンの法則」について説明させていただいた。歩く、走る、跳ぶ、投げるなどの動作は地面の反力によるもので、その力の方向と効率性を求めていくには、二つのことをベースに考えると分かりやすい。

それは「力の伝導」と「力を発揮する順序」の二つである。

 

「力の伝導」

ある目的のための動作に対し、地面からの反力を効果的に全身に伝える。

これは、多種の動作において反力の最も伝わりやすい姿勢を求めていくことにある。それは、力の伝導の良い姿勢においては大きな力を獲得でき、悪い姿勢では小さな力しか出せないからである。このため、より大きな力を得るような姿勢を全ての局面で考えていかなければならない。

 

力の伝導をハンマー投げにおいて説明するならば、地面反力をハンマー頭部によく伝えられる姿勢を、スウィングから回転そして振り切りまで作っていくことにある。そして大きな力を得る姿勢が出来たならば、それを長い時間(力積)または長い距離(仕事量)発揮できるようにする。

 

また歩く、走る、跳ぶ、投げる、さらに他の動作を力の伝導の下で考えてみると、幾つかの実験すべきものが出てくる。

例えば歩いたり走ったりする中で、身体重心の位置を変えてみるのである。感覚的なものでよいから数センチ重心の位置を下げ歩き、走ってみたならばどのような変化が起こるのであろうか?

 

次には10㎝程度下げ、さらに20㎝程度下げてみる。腰が後ろに落ちているようであれば、一歩一歩の動きの中で重心を身体の前面に持っていくように調整する。そしてどの重心の位置が最も地面からの反力を得る姿勢なのかを探すのである。

 

これら歩き、走りは力の作用した時間(力積)に関係するものであって、跳ぶ、投げる動作に於いても大変重要となる。

 

さらに歩く、走るに関しては肩甲骨を動かし両肩を後ろに置き胸を張るようにすると身体重心は身体の前面にきて反力は大きくなり、さらに伝わりやすい姿勢ともなる。

それは身体重心が身体の前面にある方が後方にあるより、一歩前に踏み出した膝の上に上半身が乗りやすく、結果反力が大きくなるからである。

 

このように法則に基づき一つ一つの動きを徹底して考え実践に移すのである。

次回は「力を発揮する順序」について説明していく。

強化へのアプローチⅠ

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「思ったような成果が出ない」「低迷が続く」「以前のような良い動きが出来ない」などと言った悩みを持つ選手は多い。
私もそうであったが、それを脱して良い状態になっても、また悪くなるといったことを繰り返す。
確かに結果がある以上原因はある。このような時は、その原因を徹底して探らなければならない。


その方法であるが「木を見て森を見ず」のように、木だけを見ていていてはなかなか突破口が見つからない。私はその森となるべくものを見つけた。


この森とは、事物の間に成立する普遍的、必然的関係すなわち法則である。「向上する」「強くなる」「高まる」ために私はこの二つの法則を基に、それぞれの方法論を展開していくことをすすめる。

 
その二つの法則とは。

 「ニュートンの法則」

 「生物の一般的特徴」

である

 

1、ニュートンの法則
先ず、「ニュートンの法則」であるが、多くの方は熟知していると思われる。
ニュートンの第1法則(慣性の法則)
物体に力を作用させその状態を変化させない限り、静止の状態または一直線上の一様な運動状態を保つ。

 
ニュートンの第2法則(運動の法則)
第1法則の慣性と関連がある。第2法則は物体に力を作用させ物体に運動の変化をさせる。

 
ニュートンの第3法則(反作用の法則)
どこに働くどのような力に対しても、逆方向に働く大きさの等しい力が常に存在する。

 
作用・反作用は何となく理解はできるが、慣性と運動はよく理解できない方が多いかもしれない。しかしこの法則は無重力状態において考えると分かりやすい。テレビにより宇宙飛行士の船内活動が放映されることが多いので、およそ無重力がどのようなものかお分かりいただけると思う。宇宙空間に想像を巡らせるならば、ニュートンの法則はある程度理解できる。


しかしこの法則を重力のある地球上で考えると難しい。このため無重力の状態と地球上での現象を比較しよく考えるのである。そうすると地球上でのこの法則が理解できる。


特にニュートンの第3法則である作用・反作用を念頭に置いておくべきであろう。なぜならば、我々は地球上で活動しているからだ。歩く、走る、跳ぶ、投げる動作は当然だと思っている人も多いと思われるが、これは地面の反力によっておこる現象である。(水中での動きも水の反力による)


地面からの反力により歩く、走る、跳ぶ、投げるなどの動作がある以上、力の伝わりやすい姿勢がある筈で、その姿勢の改善こそが動作のレベルアップに繋がると考えた。そしてこれら動作の中で力の効率性を追求していくには、二つのことをベースに考えるとよいことが分かった。


それは「力の伝導」と「力を発揮する順序」の二つである。
次回はこの二つを詳しく述べる。

室伏重信profile
◆生年月日 1945年10月2日

◆出身地  静岡県沼津市

1989年 中京大学体育学部教授

2011年 中京大学体育学部名誉教授



◆主な競技実績

陸上競技 男子ハンマー投 オリンピック代表、アジア大会5連覇

日本選手権10連覇

自己ベスト記録 75m96㎝ (日本歴代2位)



1966年 第5回アジア競技大会(バンコク) 2位

1970年 第6回アジア競技大会(バンコク) 優勝

1972年 ミュンヘンオリンピック 8位

1974年 第7回アジア競技大会(テヘラン) 優勝

1976年 モントリオールオリンピック 11位

1978年 第8回アジア競技大会(バンコク) 優勝

1980年 モスクワオリンピック

*日本代表 日本のボイコットにより出場ならず

1982年 第9回アジア競技大会(ニューデリー) 優勝

1984年 ロサンゼルスオリンピック 14位

1986年 第10回アジア競技大会(ソウル) 優勝

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